覚悟はいいですか

と、私のスマホが振動した
画面には礼から通知ありの表示が

「噂をすれば、旦那じゃん」

「ち、違うから…まだ」

最後の方は恥ずかしさに小さく言ったが、麗奈には聞こえているんだろう、ニヤニヤしたまま
「早く見たら?」と促される

目の端で麗奈をにらみ、SNSを呼び出す

『紫織、お疲れ様。今どこ?』

今夜の用事、済んだのかな?

『礼もお疲れ様。まだ麗奈達と一緒にいるよ』
『会社の近くのバーだね。迎えに行く』

すぐにきた返信に横からひじで突っ込まれる

「運転手いるのにお迎えですか~?」
愛されてるね、と言いながらまたニヤニヤ

私は赤くなった顔とスマホを隠すように彼女に背を向けて、指を滑らせる

『ジョルジュさんいるし、大丈夫』
『ジョルジュには友だちを送らせるから、紫織は俺と帰ろ』

「ラッキー!車ならもう少し呑んでも大丈夫だね
紫織の旦那候補、優しい!断然応援する~!!」 

後ろから画面を覗いてたらしい麗奈は、私がビックリしてる間に「角さ~ん、ロックお代わり~♪」とオーダーしている
私は短くため息をつき、人指し指で『ありがとう』と送信した――――

30分ほどで礼は到着し、私達の支払いを済ませてしまう

酔ってまだ涙を流しながら、

「紫織さ~ん、ついてきます~」
などと呟く久美子をジョルジュさんが支え、

「イケメンの運転手、最高!」
と上機嫌な麗奈の後について行く

「ジョルジュさん、ごめんなさい」と謝ると、やや引きつった笑顔で「お休みなさい、また明日」と挨拶して車に乗り込み、去っていった

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