覚悟はいいですか
2年生の夏、新しく幹部になった先輩が、サークルの活動資金をネコババしていたことが発覚した
その人はいつも場を盛り上げるサークルのムードメーカーで、人気が高かった
なんでそんなことをしたのか、みんな信じられなかった
理由はご実家の工場の倒産
先輩はいくつもバイトを掛け持ちして、
何とか生活を助けようとしていたらしい
でも大学生が稼げる額なんてたかが知れてる
ある時どうしても行き詰まり、
手を着けてしまった
つい魔がさしたと言っていた
バイト代が入ったらすぐに返すつもりだったとも
みんなは先輩に同情した
幹部の先輩達も、彼のために今回のことは
不問にしようと決定した
これに礼は真っ向から反対した
「大事なお金に手を付けて、きちんと返さないのはおかしい」と
先輩達は礼を冷たいやつだと非難し、自分達の決定を押し通そうとした
だが礼は折れず、淡々と自分の意見を述べる
「事情はどうであれ、やったことは犯罪であり、資金の元手は皆が支払う会費です
きちんと罪を償わなければ、先輩は僕ら全員にずっと後ろめたい思いをし続けると僕は思います
ご実家の状況が好転しない限り、また今回のようにならない保証がどこにありますか?
金額的には微々たるものかもしれない。
でも何度も続けば、こちらも立ちゆかなくなる
その時になっても皆、今と同じように、先輩を許せますか?」
みな黙ってしまった。考えてみれば礼の言う通りだ
皆の気持ちを表情で分かったのだろう。礼は穏やかに微笑んだ
「だからきちんと返してもらいましょう
まず返済の契約書を作りましょう、分割での返済にして金額は先輩の無理のない範囲。
で、どうでしょうか?」
ネコババしてしまった先輩も、きちんと償いができることで心底ほっとしたと後に聞いた
さらに礼は、先輩に今までのバイトより高収入の働き口を見つけてきた
礼はこんな風に、時に周りと対立してまでも自分の判断を貫き、皆を守ろうとする
そういうところは素直にすごいと感心した