覚悟はいいですか

5、決断~女の覚悟


「紫織、はい」

軽いブランチの後、礼はマイセンのティーカップにセカンドフラッシュのダージリンを注ぎ、ソファでくつろぐ私の前のローテーブルに置いた

「ありがとう」

私は微笑んでソーサーごと手に取ると、ひと口飲み、ほうっと一息ついた



昨夜遅くに帰宅した私達はさすがに疲れて、シャワーだけ浴びるとすぐにベッドに沈んだ
病院へ検査に行かなければならないが、あいにく日曜なので明日休みを取って行くことにしている
だから今日はゆっくりできる……と思ったら、見事に朝寝坊してしまった
まあめったにないことだし、昨日は礼も大変だったから、今日くらいいいよね?



う~ん、いい香り!

礼はこうして私に紅茶を入れてくれるが、一緒に過ごしたこの何日かで確実に腕を上げていると思う

何か特訓でもしているのだろうか?

忙しい彼のために、私こそ美味しいお茶を入れてあげたいと思うのに、礼はいつも

「彼女を癒すのも男の大事な役目だから」

と言ってさせてくれないから、少々困ってしまう

まあ最近は慣れてきて、『それもいいかな』なんて思ってなくもないんだけどね…

「何考えてるの?」

いつの間にか横から抱きしめるように座っていた礼に耳近で話しかけられ、ビックリしてちょっと肩がはねた

ソーサーを置き、彼のいる右側を振り向けば、美麗な微笑みに目を奪われる

もう、笑顔を見るたびに好きになるってどんだけよ!と自身に呆れつつ、自然と唇が引き寄せられた

ゆっくりと押し当てるようなキスをして、胸の奥がホンワリと幸せに包まれた

しばらくそのままで余韻を味わってから、離れて見ると、礼も幸せそうに笑ってた

肩を抱かれ、引き寄せられるままに胸に頬をつけて寄り添う

髪をすくように撫でられて目を閉じると、昨日会長から告げられた話を思い返していたーーーー

< 195 / 215 >

この作品をシェア

pagetop