覚悟はいいですか

「まず私の元で仕事をしながら少しずつ覚えていけばいい。貴女ならできるわ」

「秘書に戻るということですか?」

「いいえ。今度立ち上げるリゾート開発の子会社の社長よ」
「!」
「レセプションの時に、業界関係者の把握はできてるでしょう?」

いたずらっ子のように微笑む会長に、この女性はそこまで考えていたのかと驚きを飛び越え、呆れてしまった

あのパーティーは新製品の開発や売り込みのためだけでなく、うちにとっては全くの新規事業であるリゾート開発への第一歩だったということか

しかし……経営について知識はある、リゾート開発の業界の関係図も大まかに把握しているが、圧倒的に経験値がない。そんな私がいきなり社長になってうまくいくのだろうか?
それに、今まで主任でしかなかった私が取締役の一人になれば、社内でも面白くないと思う人は少なくないはずだ

でもそんな私の懸念すら、会長はお見通しだった

「フフッ、安心して。この件に関してはレセプションに関わった各部長たちから了承を得ているわ。
みな、パーティーでの貴女の働きを評価しているのよ。貴女となら一緒にやってみたいって言ってるから。
まずは社長だからと何もかも一人で背負おうとしないで、仲間として一緒にやってみたらいいんじゃない?」

「仲間、ですか?」

「わが社には男女の別なく、ちゃんと仕事の評価をできる人間もいるのよ」

会長はそう言ってウィンクを投げた

「あと、これは海棠さんとの共同開発事業になるから。
お父様との連携、よろしくね?礼さん」

「はい。私が海棠側の窓口になりましょう、いっそAthenaに出向しましょうか。
その方が紫織と一緒にいられるし」

礼と一緒?それは嬉しいけど……
い、いやいや、公私混同はダメでしょ!?
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