覚悟はいいですか
「ありがとう。大切にするよ」
……っ!やばい、目頭が熱くて持ちそうにない! 頑張れ、私の涙腺!!!
必死の思いで口角をあげ、礼を見ると……
彼は、やや頬に赤みをにじませながら恥ずかし気に目を細めてマフラーを見つめ、そっと手を添えていた
それからぎゅっとそれを握ると顔をあげ、
今まで見た中で一番の
優しい
やさしい笑みを
私に向けてくれた……
その笑顔にギュウッと胸が締め付けられる。ダメだ、もうこれ以上はもたない……
「ありがとう、また明日ね!」
瞬きしながらも最後の力を振り絞って震える声を抑え込み、
礼の返事を待つことなく踵を返すと、私はダッシュで階段を駆け上がった
一番上まで登り振り返ると、礼が強いまなざしでじっとこちらを見てる
私は心配させまいと片手を大きく振りながら笑顔で
『バイバイ~!』と口パクで告げる
礼は目を細めて口角をあげ、顔のそばでマフラーの端を振りながら
やっぱり口パクで、
『バイバイ、ありがとう』
と言ってくれた