覚悟はいいですか
「本気、なのか・・・?」

「8年、修行しました。誰にも文句は言わせません」

「守れるのか?」

「フッ・・・じゃなきゃ、ここに帰ってきませんよ」

「・・・ずいぶん自信満々だけどな、大学ん時でさえ、お前のファンから嫉妬の集中砲火に相当やられてたんだぞ、あの子。薄々感づいてたと思うけどな。
もう時効だからいうが、舞台袖でライトが倒れて足挟まれて、俺が病院連れてったこともある。でも紫織ちゃんは絶対お前に言うなって」

思い当たることがある

「松葉杖ついてた時ですか?」
友和さんが頷いた

何てことだ・・・昔の自分を蹴り飛ばしてやりたい

「まして今のお前にゃ立場もある、顔も知られている。
大学の時以上に周囲の目があり風当たりもきつい。お前を狙う女も増えるしな

あの子は昔から自分より他人のことを優先する。特にお前のためなら、それこそ心臓だって何だって差し出すんじゃないかってほどだった。そんで傷を隠したまま、お前には笑ってみせてただろ

だから俺も綾乃も心配でしょうがない
お前は守ると言ってもずっとそばにいられるわけもないのに、それでどうやって彼女を守るんだ?」

わかってる、わかっているからこそ、あの時手を取らなかったんだ
必死に自分を抑え、紫織を傷つけても断ったんだ

20歳の俺には守れないと痛いほどわかっていたから







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