覚悟はいいですか
「もうあの時のようなガキじゃありません」

望む力はすべて手に入れた。だから攫いに来たんだ、愛する女を

友和さんは俺をじっと観察している。やがてふうっと息を吐いて目を伏せ、そのまま立ち上がった

まだ何かあるのか?

「礼の決意はわかった。自信にそれだけの裏付けがあることも

ただお前が変わったように紫織ちゃんも社会に出てからいろいろあった
・・・彼女は普通のOLと少し事情が違うことを覚えておけよ」

「・・・紫織に何があったんですか?」

窓に向かう友和さんを目で追いながら努めて冷静に問う

友和さんはしばし間をおいてから、俺に背を向けたまま言った

「ま、それはおいおい話してやるよ。それより」

言葉を切って、友和さんが振り返る。ニヤリと笑った

「どうやらタイムリミットだ。窓の外、見てみろよ・・・今年は虫が多いな」

虫ってまさか!
焦って窓に駆け寄ると・・・なんてことだ、紫織が男に囲まれてる。本人は鍋に集中してて一向に気づかないが、気を引こうとしてるのが見え見えだ

思わず顔をしかめると隣から笑い声がした
くそっ!いつからだよ!!こうしちゃいられない!

その時、紫織がこちらに向かい歩いてくるのが見えた。俺を起こしに来るのだろうが、後姿を目で追ってるやつらが気になる

すぐに踵を返し、ドアに向かう
少し遅れて友和さんがまだ笑いながら「待てよ、礼!」と追いかけてくるが、俺は無視してそのまま部屋を出た

この状況で待てるかってんだ!!

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