覚悟はいいですか
と、礼の腕がさらに私を抱き寄せた
顎を肩に乗せ、頬をすり寄せてくる

「れ、い・・・?」

「紫織、好きだよ。ずっと好きだった」

「え・・・」

一瞬、頭が真っ白になる
急に何を言い出すの?それに・・・

「ずっと?」

「そう、8年前からずっと。
ほんとのこと言うと初めて会った10年前から、俺は紫織のことが好きだった」

「だって、友達以上にみれないって・・・」

自分で言って胸が苦しくなった
礼がふうっとため息をつく

「そう、あの時はね。ああいうしかなかった。俺にはやらなきゃいけないことがあったから。

俺には守らなきゃいけないものがあって、それは今も変わらないんだけれど・・・

うちがどんな家か、知ってるよね?」

綾乃さんから聞いた、海棠の家のことを言っているんだろう
そう思って頷くと、礼も頷いて続ける

「俺には兄がいる。兄は海棠の後継ぎとして、それこそ物心つく前からいろんなものを背負わされていた。

海棠はでかい。その分様々な恨みつらみも兄は背負っている。

俺はそんな兄の背中を見て、兄を守るのは俺だと子どものころから心に決めていた。そのために自分を鍛えてきた。

海外へ最後の修行に出る前に、兄は俺に日本の大学に行けと言ったんだ。普通の学生生活を体験しておけと。

そこで紫織に出会ったんだ」

一気に言ってから大きく息を吸い、私の肩に手を置いて自分の方に振り向かせる

目の奥にぞくっとするような揺らめきを感じて、胸がドクンッと揺れた

「一目で惹かれた。一緒にいるうちにますます好きになって、正直焦った。
俺には恋してる暇なんてないのがわかりきっていたから、何度もあきらめようとしたけどできなかった。

だから、ただ心の中で思うだけでいようとしたんだ。
・・・そんなこと、できるわけなかったのにな」




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