覚悟はいいですか
当時を思い出したのか、自嘲するように笑ってまた話しだす

「そんな時、紫織に告白された。凄く嬉しかったよ、マジで。
いろんなもの全部投げ出してお前の手を取りたかった。

でも捨てられなかったんだ、兄も海棠も」

「!」

礼の目から涙がこぼれた。思わず頬に手を添えると、礼がその上に手を重ね、目を伏せたまま瞬く

「紫織に泣かれても冷たく突き放さなきゃとか、そんなことを考えていたら、君はあっさり引いたから正直驚いたよ。
でもそうすることで俺の負担にならないようにしてるんだと気づいた。
だから決めたんだ」

礼が目を開けた。私を切なげに見つめながら、重ねた手を握って片方ずつ手のひらに唇を圧し当て、自分の胸に抱きこむ

「大切なもの全て守れる男になる
その力を手に入れるためにどんな努力も惜しまないと、手に入れるまで紫織に会わないと誓った。

だから紫織の前からも姿を消したんだ」


礼も好きでいてくれたなんて・・・夢のようで、でも何とも複雑で・・・

8年前のあの日から私は恋を封印したから

今のこの感情が何を表してるのかわからない

わかっているのはあなたはやっぱり遠い存在だということで

海棠を捨てられなかったのなら、私との先に未来はないでしょう?

そんな思いに囚われてつい顔を俯けてしまう

「紫織?こっちを向いて?」

ふいに礼の手が両頬をはさんだ
そのまま顔を上げさせるから、私は目を瞬かせ彼を見上げた
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