覚悟はいいですか

解凍した私は真っ先に部屋にむかい、帰り支度を始めた

三十六計逃げるにしかず!だ


ん?なんか違う気もするが、とにかく何でもいい!

絶対会えない、会いたくないっ!

無理、無理無理無理だから!!!

絶対焦ってなんかやらかすから!動揺して自分焼いちゃうかも!


ブツブツと何か呪文のように呟きながら荷物をまとめて出口を振り向くと、

そこには廊下に膝をつき手を合わせる友和さんと、まっすぐ私をみつめる綾乃さんの姿が……


「紫織、ごめん。でもあきらめて。
 あんたがいないと明日まわせないのよ。
キモチはわかる、でも帰さないわよ」


「紫織ちゃん、ほんとごめんね。俺も久々にあいつと話して舞い上がっちゃってさ~。
つい『お前も来いよ』って誘っちゃったんだよ
礼もふたつ返事で『ぜひっ』って……

電話切ってから綾乃に怒られて気づいたんだけど…
イテッ!

ごめん!でもやっぱり君がいないと
さばけそうにないからさ。
頼む!この通り!!」


片手にスリッパを持ちながら腕を組む綾乃さんと、土下座する勢いの友和さんを見たら


断ることも逃げることもできない……


私はバッグを手から落とし、その場にしゃがみ込む

脱力したままただ頷き、長い長い溜息をついた……

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