覚悟はいいですか
あんなに熱烈に愛を囁いたアルブレヒトは、ジゼルの目の前で婚約者にキスをした
礼は家のために私をふった

今日ここで、彼とこの演目を見たことは、神様からの警告かもしれない

礼と私では住む世界も立場の重さも違うから
礼が海棠を捨てられないと自らに課してるなら、私達に幸せな未来はないように思えてならない

やっぱりこの気持ちは蓋をすべきなんだ
そうでなくても私は恋愛したらいけないんだから、礼を巻き込むことは避けなければ…

そう、私は礼が好き
ずっとだったのか、再会してまた好きになったのかわからないけど・・・
この気持ちは伝えられない

もし今、恋人になれたとしてもいつか別れる時、礼も傷つけるし、私はそれこそ生きていられないだろうから

私には礼がくれたたくさんの思い出がある
彼に応えていない今ならまだ間に合う

友人のまま、少しずつ熱を冷ましながら彼の幸せを見守って生きていこう
きっと心は張り裂けて捻じれ潰れて、粉々になるだろうけど
それでも礼に傷ついてほしくない


舞台にひと筋の光がさし、鐘の音が響く。ジゼルはアルブレヒトをそっと抱きしめ、息があるのを確認して、二人の手がゆっくりと離れた・・・
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