覚悟はいいですか
俺にとって彼女との再会は8年分の想いの積み重ねの上にあるが、紫織にとっては再スタートしたばかり
そのことにやっと思い至り、ならば信頼を取り戻そうとチャンスを待っているのに、お互い忙しくてなかなか会えないことが歯がゆくてしようがない
その上、望みもしない見合いで時間をとられるなんて冗談じゃない
だが会社に深く関わっている母には俺の予定も筒抜けで、知らない間に組み込まれた席は仕事上の付き合いもあるから無碍に断れない
だから今日のように相手先の都合によってできた隙間時間でもなければ、紫織に会うことすらできなかった
パリから彼のバレエ団が来日していたことはチェックしていたが、俺のスケジュールがパンパンで、しかたないからチケットだけでもプレゼントしようと考えていた
ただ貸し切りにしたその席に、万が一誰か知らない野郎が隣に座ったらと考えただけで居ても立ってもいられなくなり、チケットのことを切り出せないでいた
だからたった半日といえど、俺にとってはやっと巡ってきたチャンスで…
偶然とは思えず、浮かれまくっても仕方ないだろう