夫人
「授業について、少し解らない所があるんだ。
いつも成績の良い君なら解るかと思って。」

キャリーは自分の心臓が張り裂けそうになっているのを感じた。

数年もの間いつも遠くから見つめることしか出来なかった彼が、目の前に居る。

もしかすると、挨拶以外で会話をするのは初めてではないだろうか。

そんな彼が、キャリーを頼っている。
それだけで幸せだった。

「今、時間あるかな?」

「えっ…ええ。もちろんよ。
私に出来ることなら協力するわ。
図書館で良いかしら?」

「ああ。ありがとう。
君に助けてもらえるなんてラッキーだよ。」

キャリーは信じられないでいた。
ジョエルが、笑いながら楽しそうに話しかけてくれる。

「君は本当に頭が良いんだね。
教師よりも解りやすく教えてくれるなんて流石だよ。」

「そんなことないわ。
たまたま得意だっただけよ。」

恥ずかしさと嬉しさ。
色々な思いが混じり、うまく話せないキャリー。
彼女は、自分の心臓の音がジョエルに伝わらないか不安だった。
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