天狐の守護
「ねえ、なんでそんなところにいるの?ひとりは、さみしいよ?」
この時私は5歳ほどだっただろうか。
私は神主の伊達【いだて】おじいちゃんと、私のお母さんと一緒に天稲荷神社に行った。
獣道を歩いて片道約2時間半。ようやくひらけた頂上につけば、そこにはポツンと社が建っている。
大きくて立派だが、人の気配がなく建物の傷みも酷い。
そして私はそこに貴方が居るのを見つけた。
「ちょっと、潤陽【うるひ】誰に話しかけてるの?」
「え?神社の中にいるおにいさん!」
指をさして知らせても、お母さんは見えていないようだった。絶対に、見えるはずなのに。
だが、伊達おじいちゃんだけは違った。
「潤陽は見えるのだな。将来、潤陽は特別な能力の持つ子になるだろうね」