天狐の守護
「ねえ、伊達おじいちゃん、おにいさんのところ行ってもいい?」
「いや、それは駄目だ。近づいてはーー…」
伊達おじいちゃんが言い切る前に、『おにいさん』の方へ走って行ってしまった。
「おにーさん!みみ!いぬのみみ!」
「……誰だお前は」
その声は高くも低くもない、だが凛とした存在感のある声だった。耳にスッと入る、一度聞けば忘れない声。
銀色にも光る綺麗な白髪は肩につかないくらいで、右に垂れる長い一房の髪には青いリボンが巻かれている。
潤陽を怪訝そうに見つめる瞳は珍しい紫色で、濁りがない。
高い鼻筋に、薄い唇。キメの細かい白い肌は誰もが見惚れるだろう。
そしてその姿からはこの世のものとは思えない、異彩を放っている。