DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは、狭苦しい通路のゴミを蹴飛ばしながら歩いた。
飛行機からブリッジへ。
空気の匂いが変わる。
空調が効いているはずなのに、生臭い湿気がまとわりついてくる。
日本だな、と感じた。
フランスの空港はいがらっぽく乾燥して、うっすらと硝煙の匂いがしていた。
いい加減な態度の入国審査があって、預け荷物が流れてくるクレーンを素通りして、紙一枚を書けば誰でもパスする税関を抜ける。
空港のゲート、どこもほんとにいい加減だった。
帽子を取れとも言われなかった。
パスポートの写真もろくに見られてない。
あのさ、おれの顔、すげー目立つんだよ?
額にデッカい真っ赤な胞珠があるから。
いや、見て見ぬふりかな。ことなかれ主義ってやつ。
デカい胞珠なんてトラブルの元凶にしかならないんだし、さっさと空港から離れろって思われてんじゃない?