DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれが前、鈴蘭が後ろになって歩き出す。
相変わらず、向かう先はいい加減。
でも、たぶんこれでいい。
おれの勘は、おれの頭脳より役に立つ。
鈴蘭は、話し出したら止まらないらしかった。
煥のこと、煥のこと、煥のこと。
どれだけ好きなのか。何で好きになったのか。どこが好きなのか。
煥と交わした会話は全部覚えているらしい。
煥が歌った唄も全部データを持っているという。
過去の思い出や記録は有限だけど、空想や妄想は無限で自由だから最高なんだとか。
「追い掛けて追い掛けて追い掛けてやっと得られるものって、ほんのちょっとだったんです。悔しいし苦しいしどうにもならないし、大変だったんですけど、
今はもう手に入っちゃったんですよね。夢みたい。これからはわたしが独占できるんです」