DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「何だ?」
呻き声は反響している。
四方に道が通じた小部屋の中では、呻き声がどこから聞こえてくるのか特定できない。
こっちに向かってきている。そう感じる。
鈴蘭が動揺している。
悲鳴みたいな甲高い声で、意味をなさない言葉を口走っている。
姿が見えた。人の姿が、いくつか。
直立して二足歩行するって、実は難しいことらしい。
そいつらは、ぐらぐら激しく揺らめきながら近寄ってくる。
這いずってるやつもいる。
「あー、やっぱ、あれか。抜け殻か」
鈴蘭が大きな悲鳴を上げた。
その声に呼応するように、近寄ってくる抜け殻たちが大きな呻き声を上げた。