DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


到着ゲートを通過する。


そして、おれは立ち止まった。



「待っていたよ、理仁《りひと》」



傍《はた》」から見てりゃ一発で、それがどんな場面なのか推測できただろう。


仕立てのいいスーツを身に付けた五十歳くらいのイケメン紳士が、目尻に上品そうな笑いじわを刻んで、気さくな様子で軽く手を挙げる。


対する相手は、帽子を目深にかぶった未成年。


肩幅広めで背が高いところとか、目尻が垂れて唇が厚めなイケてる顔とか、明らかにイケメン紳士と似てるわけ。



裕福な父親が、遠くフランスの地に留学してた息子を迎えに来たシーンだ。


感動の再会。世界じゅうどこに行ったって治安が悪いこのご時世、お互い五体満足で「おかえり、ただいま」ができたなんて、素晴らしく幸運な出来事で。



神さまに感謝?


するもんかよ。


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