DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは目を開けた。
まぶたがまだあった。
ものを映す目がまだあった。
目に映るものを認識する脳がまだあった。
体も、たぶんまだあった。
コンクリートとアスファルトの間で、もうすぐぺしゃんこになる体は、何の感覚もなかった。
見上げる空は、赤くて黒くてひび割れていて、雨が降っていた。
寒そうだな、という気がした。
なるほど。地球は割れずに形を保ってるみたいだ。
町は、見る影もないけど。
もしかして、おれがこの町で最後の人間かもね。
何でおれなんだよ。無様じゃねーかよ。
何かさ、ほんと意味わかんない。
おれ、何のために生まれて何のために生きて何のために死ぬの?
謎だらけのままじゃん?
笑っちゃうよ。こんな人生、最低だろ。
ああ、もう。
何もかもがどうでもよすぎて、今、すっげー切実な願いを思い付いてしまった。
全身全霊を懸けて願っちゃっていいですか?
いいよね。
だって、しょーもねぇよ、この世界。失敗作だって。