DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


でも、だったら何だっていうんだろう?



おれが今こうして生きている一枝のほかにも、いくらでも代わりがあるってのか?


この一枝が失敗作だったら、さっさと枯れて淘汰されて、別の一枝の養分になっちまうほうがマシだって?



冗談じゃねぇよ。



この世界は中途半端だ。


ユートピアでも桃源郷でもパラダイスでもエルドラドでもない。


じゃあ価値がないのかっていったら、そんなわけねぇだろう。



壊すよりも守るほうが難しくて、滅ぼすことなんてきっと簡単なのに、創り出すことは決してできない。



だけど、おれは、難しくても不可能だとしても、あきらめたくない。


失いたくないものだらけだから。



だからさ、テメーがさ、あまりにも相容れない「敵」であることを痛感してさ。


ブチキレたんだよ。


本当に、本気で、人を殺したいと思った。


生まれて初めて、心の底から殺意一色に染まった。


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