DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ほどくことのできない拳の内側で、爪の刺さった手のひらが痛い。
吠え続ける喉が痛い。頭がはち切れそうに痛い。
胸が、いろんな感情と記憶がごちゃ混ぜになって沸騰している胸が、痛くて痛くてたまらない。
おれは命じた。
【喉を突け。そのナイフで自分の喉を突いて、死ね】
ナイフはわなわな震え続ける。
足りない。あと少し、チカラが足りない。
おれはまたチカラを振り絞る。
研ぎ澄ませた思念を、おれだけの特別な声に吹き込む。
渾身の号令《コマンド》を発する。
【突け! そして……】
そして、何もかもが終わることを願った。
呪いも憎しみも怒りも、すべてを懸けて、願った。