DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは、のそっと立って、頭上の棚から二人ぶんの手荷物を降ろして抱えて、通路を先行する姉貴に続いた。
「姉貴、荷物」
「あんたが持って」
「え~」
「航空券の手配から税関申告書や入国カードの記入まで、面倒なことは全部わたしがやってあげたでしょ。荷物くらい持ちなさい」
「へいへい」
八つ年上の姉貴はおれの保護者役。
とはいえ、十八歳未満にはあんまり見えないおれは、変な虫がつくのを嫌う姉貴のカレシ代理をやらされることもけっこうあって。
おかげで、おれにも女の子が寄ってこなくなってんですけど。
困るんですけど。
おれ、モテ男で通ってたはずなんですけど。