DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


お金の心配はしたことがない。


一年前に実家を離れて以来、姉貴がおれのぶんも含めてお金の管理をしてくれてんだけど、通帳にはまだまだ余裕があるそうだ。



だって、実家、超絶お金持ちだし。


おれも姉貴も、与えられたお小遣いを突き返してド根性やるようなキャラじゃないし。


上手に世渡りできる部分はやっちゃったがいいじゃんっていう省エネスタイルだし。



フランスに滞在したのは、昔、家族でそっちに住んでた時期があるからだ。


おれはよちよち歩きだったから、ほとんど覚えてない。


姉貴が当時の知り合いと連絡をつけて、その人を頼って転がり込んで、一年間。



あっという間の日々だった。


姉貴は美容師だから仕事らしきことをしてたけど、おれは何もなくて、とりあえず学校。



長く続くはずもない、という気はしていた。


きっと呼び戻されるだろう、と。



だって、おれが朱獣珠《しゅじゅうしゅ》の預かり手である限り、宿命は必ず付いて回るから。


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