DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「姉貴、その靴、新しくない?」
「職場で餞別《せんべつ》にもらったの。よく気付いたわね」
「だって、前のやつ、ヒールが折れて悲惨なことになってたじゃん。直そうとしたけど直んなくて」
「そう。気に入ってたのにね」
「足はほんとにもう平気?」
「このブーティだから平気。くるぶしが固定されるの」
そっか。だから、おれに荷物を押し付けたのか。
一人で何でもテキパキやっちゃう姉貴が自分で自分の荷物を持たないなんて珍しいと思ったんだ。
「まだ治ってねーんなら、無理しないでよ~。立ち仕事の美容師は、足、大事でしょ」
「はいはい、ご心配ありがとう。仕事を再開するまでには治すわよ」