DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
にこやかな入国審査官のゲートを無事に通過して、預け荷物のスーツケースを合計四個、回収する。
おれが荷物をカートに載っける間に、姉貴はタクシーを手配した。
空港と提携したハイヤーって、意外とお手頃価格なんだそうだ。
税関を抜けて、到着ゲートを通過する。
そして、おれと姉貴は立ち止まった。
「待っていたよ、リア、理仁」
傍《はた》から見てりゃ一発で、それがどんな場面なのか推測できただろう。
仕立てのいいスーツを身に付けた五十歳くらいのイケメン紳士が、目尻に上品そうな笑いじわを刻んで、気さくな様子で軽く手を挙げる。
対する相手は姉弟で、特に弟のほうの顔立ちとか骨格の感じとか、明らかにイケメン紳士と似てるわけ。
裕福な父親が、遠くフランスの地から帰ってきた娘と息子を迎えに来ました。
そんなシーンだ。