DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれの胸の上で朱獣珠がドクンと激しく鼓動した。
嫌がっている。自分をあの男の前にさらしてくれるなと、おれに訴えている。
わかってるよ。だから、落ち着け。
そうでなきゃ、おれまでおまえに共鳴して苦しくなっちまうだろ。
姉貴はサングラス越しに親父をにらんで、言い放った。
「連絡した覚え、ないんだけど?」
親父は、よくできたスマイルを顔に貼り付けたまま、微妙に噛み合わない言葉を返した。
「無事に帰ってきてくれて安心したよ。車に乗りなさい。ひとまず家に帰ろう」
「帰らないわよ。だいたい、あなたの家はわたしたちの家じゃないから。行くわよ、理仁」
姉貴はさっさと歩き出した。
おれもカートを押して続く。