DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
姉貴のカウントダウンも聞こえてた。
だから、銃声が聞こえたときにはもう「あー、やっぱりね」って感じだった。
わかってたんだよな。
なのにさ、死なせた。
未然に防ぐ方法、なかったのかな。
あの一件での衝撃はもう一つあった。
おれが第一発見者じゃなかったってこと。
血まみれの姉貴の死体は、男に抱きかかえられていた。
男っつっても、おれと同じくらいの年頃で、おれと同じように帽子を深くかぶってて、おれと同じで猛烈なチカラを体の内側に押し込めていた。
あいつもおれと同じだ、と直感した。
額にデカい胞珠を持ってる。
その厄介な体質の代償として、異能も持ってる。
男の顔は見えなかった。
言葉も交わさなかった。
男は姉貴の死体を投げ出すようにして、あっという間に逃げていった。