DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
大きな川に架かる橋を渡ると、そこは、おれと姉貴の住み慣れた町だ。
親父が建てた私立学校、襄陽学園もこの町にある。
港町として発展した場所らしい。
海のほうから順に、船着き場や倉庫街があって、繁華街が広がってて、町の真ん中あたりに襄陽学園があって駅があって、そのへんから住宅地が始まってて、だんだん山になる。
三差路や五差路が頻発する迷子上等な繁華街へと、タクシーは入っていく。
カーナビが車線変更を告げる。
ちょっと渋滞。目的地のビジネスホテルまで、あと十五分か、二十分か。
姉貴はスマホから目を上げた。
「住む場所、探さないとね。明日にでも」
「もしかして、空港からずっと部屋探しの検索してた?」
「当然。住所が決まらないことには転居届も出せないし、仕事探しもできないもの」