DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
こうして眺めてる間にも、薄汚れた背の低いビルからポンッと煙の塊《かたまり》が噴き出して、人らしきものが落ちていく。
車の流れが緩慢にルートを変更する。
厄介事のあったエリアに小さな空白ができて、それだけ。騒ぎすら起こらない。
今の中高生は、終末世代と呼ばれる。
おれたちが生まれたころから急速に世界が壊れ始めて、人口が激減してるんだとか。
そんな世界で育つおれたちは、大人から見て、とんでもなく壊れてるんだとか。
知ったことかよ。
今、おれの目に映る世界が壊れているのかどうか、これじゃない世界を知らないおれには、判断がつかない。
いや、まだ壊れてやしねーだろ、ってのがおれの正直なところ。
壊れるとか死ぬとか滅びるとかってのはもっと絶望的なモノだと思うから。
世界はまだ、こうして広がってるじゃねーか。
町が町の形をしてて、車が走ってて、終末世代だって学校に通ってて、社会的な影響力さえあればキレイな建物の中で過ごすことができて。
十分だろう。