DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
女の子が、ひゃっ、と喉の奥で小さな声を出した。
「や、えっとその、デ、デートって、そんなっ! わたしではセンパイに釣り合わないですし、今からちょっと行きたい場所がありまして、すみませんっ!」
「え……」
「おおおお誘いいただくのはすごくとっても光栄なんですけれどもっ、わたし、すっ、好きな人がほかにいまして、その人のことしか今は考えられなくて!
生意気を言ってごめんなさいですけど、そういうわけなのでごめんなさいっ!」
折れちゃいそうに細い、かわいらしい声が、おれに驚愕を与える。
【何で、おれの声が……】
女の子は慌てふためいた様子で自分の顔や髪をさわりながら、チラチラと上目づかいでおれを見た。
「もしかしてなんですけども、違ってたらすっごく変なこと言うので聞き流してもらいたいんですけども、センパイって特別なチカラを使う人かな、って思うんですけども」