DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは女の子を凝視した。
違う。このショートボブの子じゃない。
夢に出てくる青龍の女の子は長い髪をしていて、絶対にこの子とは違う。
だいたい、朱獣珠が何も言わないんだ。宝珠の預かり手のはずがない。
記憶がパッとよみがえった。
文徳と初めて話したときの記憶だ。
まわりみんながぐっすり眠ってるときに、文徳ひとりだけ楽しそうに笑ってた。
「これやったの、きみなんだろ?」って、すっげーナチュラルに訊かれて、ギョッとした。
弟の煥《あきら》もチカラを使うんだって話を聞き出すまでは、あの笑顔は怖かった。
この子も文徳と同じ?
「預かり手の、血筋……」
ヤベぇ、うまく言葉が出てこない。
女の子が代わりに言葉を重ねようとした。
次の瞬間、また、おれは驚いて息を詰めた。