DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ビルの高さがそのオーナーの社会的なランクをそのまま表している。
ここ、襄陽学園の塔にはどういう実質的な機能があるんだか、おれは知らない。
でもまあ、社会的に「襄陽学園はランクが高いんです」って示すには十分だ。
似たような塔は隣町にもある。
KHAN《カァン》って企業の本社ビル。
KHANは医療機器メーカーだ。
胞珠が本来持つ「生体エネルギーの増幅」という効果を活用したデバイスで、バカ当たりした。
新手の電動義肢とか、異色の人工臓器とか、そんな感じの商品ラインナップだ。
社会貢献の一方で、KHANには黒い噂が絶えない。
その技術を使って、違う用途のデバイスも作っているらしい。
ドーピング検査に引っ掛からない筋肉増強システム、とか。
法律的には武器に分類されない武器、とか。
くすんだ四月の日差しを受けて建つ、黒鉄の釘みたいなKHANビルを見る。
「ラスボスの風格だ。胞珠を商品にしてんでしょ? おれとおたくさんと、縁がないわけないよね~」