DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは、さよ子の脇の下から腕を差し入れて、その軽い体を肩でかつぐようにして、ひょいと持ち上げて立たせた。
体に触れたのは一瞬だ。
さよ子の体は、うまいこと力が抜けた状態だったし、痛くもなかったはずで。
介護のプロからコツを習った。
抱えるほうと抱えられるほう、どっちにも負担の少ない体の使い方は、覚えておいて損がない。
使える場面は意外とあるんだ。今みたいな遊びだけじゃなくて、本命って呼べる場面が。
「コケないように気を付けなよ~?」
「ははははいっ!」
さよ子は真っ赤になって、ペコペコしながらおれに礼を言って、逃げるように廊下を去っていった。
鈴蘭もさよ子を追い掛けて、行ってしまった。
連絡先は、お互いに訊かなかった。
だって、近いうちにまた必ず四獣珠が引き合うはずだって、確信があるから。
あ、でも、あの子ら、煥の出待ちするつもりだったんじゃねーの?
おれが追い返しちゃったよ。
やれやれって気分で、息をついて。