DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


おれは、さよ子の脇の下から腕を差し入れて、その軽い体を肩でかつぐようにして、ひょいと持ち上げて立たせた。


体に触れたのは一瞬だ。


さよ子の体は、うまいこと力が抜けた状態だったし、痛くもなかったはずで。



介護のプロからコツを習った。


抱えるほうと抱えられるほう、どっちにも負担の少ない体の使い方は、覚えておいて損がない。


使える場面は意外とあるんだ。今みたいな遊びだけじゃなくて、本命って呼べる場面が。



「コケないように気を付けなよ~?」


「ははははいっ!」



さよ子は真っ赤になって、ペコペコしながらおれに礼を言って、逃げるように廊下を去っていった。


鈴蘭もさよ子を追い掛けて、行ってしまった。



連絡先は、お互いに訊かなかった。


だって、近いうちにまた必ず四獣珠が引き合うはずだって、確信があるから。



あ、でも、あの子ら、煥の出待ちするつもりだったんじゃねーの?


おれが追い返しちゃったよ。



やれやれって気分で、息をついて。


< 181 / 405 >

この作品をシェア

pagetop