DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ポケットでスマホが唸った。姉貴からの電話だ。
おれは通話アイコンをタップした。画面に姉貴が映る。
〈もしもし、今は電話して大丈夫?〉
「大丈夫だよ。部屋探し、ごくろーさん。いい物件、あった?」
〈もう決めてきたわ。即入居可能の部屋だから、できるだけ早いうちに家具でも何でもそろえて、引っ越しちゃいましょ〉
「早っ! さすがすぎますゎ、おねーさま」
〈今週末は家具と家電の買い物ね〉
「了解。で、今日はこれからホテルに戻ればいい?」
一拍、間があった。
姉貴は画面越しにおれを見つめた。
〈病院に連絡してみたの。面会、午後七時まで許可できるって言ってもらった。行くでしょ?〉
一拍、おれも答えそびれた。
それから、無理やり笑って答えた。
「行く」
一年間、目を背け続けてきたから。
そろそろちゃんと会いに行かなきゃ。