DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
七章:集結_concentration
「やっとそいつはちゃんと唄になるんだ」
夕暮れの駅前の雑踏の中で音楽が始まろうとしている。
ストリートで演奏するときの瑪都流《バァトル》は、スタジオやライヴハウスでやるときとは少し編成が違う。
ドラムセットを持ってこられないから、ドラマーの牛富は機械いじりに徹する。
打ち込み音源のドラムを流しながら、音響の調整や録音、DJ的なことまで。
シンセサイザーの雄も、持ち運びが簡単な軽量型のキーボードだ。
効果音の種類がちょっと変わる。そのわずかな違いをあれこれと熱く論じるファンがいる。
スタジオバージョンではどうのこうの、ストリートバージョンのほうが云々かんぬん。
すっげーコダワリをぶつけ合う議論を、暇つぶしも兼ねて聞いてたんだけど。
どっちだっていいじゃん。
優劣つける意味、ある?
どっちのバージョンだって、あいつら全員が合意して納得して創ってる音なんだってば。