DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
姉貴は、子犬か何かを見るときみたいに目を細めて、さよ子の後ろ姿を見送っていた。
「かわいくてキレイな子ね」
「しかも、すっげーおもしろいし」
「今日はガールハントしてたわけじゃなかったの?」
「いやぁ、最初はあの子のこと引っ掛けようと思ったんだけど、引っ掛かってくれなかったんだよね。号令《コマンド》が効かなかった」
「え? じゃあ、四獣珠の?」
「違うらしい。別系統の宝珠を預かってる家系の子だって。あの子自身は異能の持ち主じゃないけど」
「別系統か。あるのね、本当に」
「ひいばあちゃんの古文書によると、ね。でも、預かり手の家系が途絶えたり、自分から宝珠を神社に寄贈する預かり手もいたりして、
昔ほどきちんと全部がそろってる宝珠もあんまりないんじゃないかって話だったけど」
「全部っていうのは、四獣珠だったら四つともが現存しているって、そういう意味よね?」
「うん、それ。でね、四獣珠の預かり手が、この場にあと二人いる。さよ子ちゃんの隣にいる髪の長い子と、バンドのヴォーカリストだよ。
ほら、今からフロントに出てくる銀髪のやつ」