DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
人の流れから外れた暗がりに、そいつは立っていた。
おれとあんまり変わらないくらいの長身。
そのくせ華奢って言っていいくらい、かなり細い。
海牙という名のそいつは、駆け寄ってくる姉貴に、計算し尽くしたみたいな左右対称の笑みを作ってみせた。
「お久しぶりです、長江リアさん。ケガはひどくなかったようで、安心しました」
「わたしの名前、知ってるのね」
「あなたこそ。調べ物が得意なのは、お互いさまのようですね」
男の声じゃあるけど、圧を感じさせないソフトな声だ。
それにしても最近、イケメンに縁のあるよなー。
海牙ってやつも、トルコ系の血が入ってるって言われても納得できちゃうような、鼻筋の通った美形だ。