DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
普通なら。
相手が親父でないのなら。
おれが命じた言葉は、対象者の行動を縛る。
何でもさせることができる。
対象者の抵抗の意思が強いときには、くたびれるほど集中してチカラを使わなきゃいけないけど。
号令《コマンド》、と名付けた能力だ。
世界には、まれにおれみたいな異能者がいるらしい。
そいつらは軒並み全員、巨大な胞珠を持っている。
昔からそういうものなんだそうだ。古文書が残ってた。
でも、おれのチカラはちょっとした欠陥品だ。
「その声のチカラを、また貸してくれないか? 理仁、父を助けると思って、協力してほしい」
親父は笑顔を崩さない。
太い槍でぶち抜かれたダメージは一切ない様子で。
おれは舌打ちする。
やっぱり、古文書にも載ってたとおりだ。
チカラは血で使うものだ、と。
チカラある血を色濃く引く者にマインドコントロールは効かない、と。