DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
さよ子が車のそばでおれたちに向き直って、ペコリと頭を下げた。
それから、ぶんぶんと勢いよく手を振って、車に乗り込んだ。
車は来たときと同じように、静かで甲高いモーター音を立てて走り去った。
さて、と場を仕切り直すように声を張ったのは、海牙だ。
「ぼくもそろそろ退散します。本屋とファミレスにでも寄って帰りますね。総統があんなふうにおっしゃったからには、ぼくたちはまたすぐに会えるんでしょう」
海牙はあっさりときびすを返した。
その背中に、文徳が声を掛けた。
「本屋に行くって、参考書でも探しに? 全国模試のランキングで、阿里海牙くんの名前をいつも見てるよ。どんな勉強の仕方をしてるんだ?」