DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
八章:緊迫_tense_situations
「うっわ、容赦ないね~」
おれが路地に駆け込んだときにはもう、戦端は開かれていた。
海牙と煥《あきら》が背中合わせの立ち位置で身構えている。
そこにだけ外灯の光が落ちて、視界がいい。
「しつこいんですよ、彼ら。先日も丁重にお相手してあげたんですが、手加減しすぎましたね。もっと激しいのがお好きなようで」
「そんなにしょっちゅう、こんなのと戦ってるのか?」
「しょっちゅうなんて、まさか。今までは、カツアゲしに来る不良をいじめ返して遊ぶことはあっても、戦闘のプロとのケンカなんてしたこともありませんでした。
今年に入ったあたりからですよ、彼らがぼくに目を付けたのは」
海牙の足下には一人、暗色の服を着た男が引っ繰り返って伸びている。
覆面のせいで、顔は見えない。