DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
煥もまた、海牙と同時に動き出していた。
低く滑るように覆面との距離を詰める。
あっさりと、ゼロ距離。
次の瞬間、覆面が吹っ飛ぶ。
正拳突きの残心を一瞬だけ見せて、煥はまた低く跳ぶ。
襲い掛かってくる別の覆面の脛《すね》を砕くローキック。
膝を突いたところへ間髪入れず畳み掛ける踵《かかと》落とし。
おれの背後に足音が駆け寄った。
姉貴と文徳《ふみのり》と鈴蘭だ。
おれは腕を広げて、三人を通せんぼする。
「ここから先はダメだよ。おれらが行ったって、足手まといになる」
覆面がこっちを振り返る。
顔は見えやしないけど、ニタリと笑う気配があった。