DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
卑劣なこと考えてんじゃねーよ。
瞬間的に沸いた怒りを、おれは号令《コマンド》に叩き込む。
【こっち来んな!】
今まさにこっちに踏み出そうとしていた覆面が、壁にぶつかったようにガツンと立ち止まる。
混乱のまなざし。
バランスを崩した体勢を立て直そうと、慌てて腕を振り回す。
その背後に、海牙。
「がら空きですよ」
海牙の細い手が触れたと思うと、覆面は屋根の高さまで跳ね飛んだ。
別の覆面の頭上に落ちてくる。
もつれ合って倒れる二人をまとめて、海牙はやすやすと蹴り飛ばす。
ヒュッ、と音がした。
煥が身をかわす。
壁に当たって、細長いものが地面に落ちた。
「ボウガンか」
「暗視スコープを使って撃ってきましたね。赤外線の位置……あの暗がりに何人か、飛び道具を使う人がいるようです」