DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


卑劣なこと考えてんじゃねーよ。


瞬間的に沸いた怒りを、おれは号令《コマンド》に叩き込む。



【こっち来んな!】



今まさにこっちに踏み出そうとしていた覆面が、壁にぶつかったようにガツンと立ち止まる。


混乱のまなざし。


バランスを崩した体勢を立て直そうと、慌てて腕を振り回す。


その背後に、海牙。



「がら空きですよ」



海牙の細い手が触れたと思うと、覆面は屋根の高さまで跳ね飛んだ。


別の覆面の頭上に落ちてくる。


もつれ合って倒れる二人をまとめて、海牙はやすやすと蹴り飛ばす。



ヒュッ、と音がした。


煥が身をかわす。


壁に当たって、細長いものが地面に落ちた。



「ボウガンか」


「暗視スコープを使って撃ってきましたね。赤外線の位置……あの暗がりに何人か、飛び道具を使う人がいるようです」


< 225 / 405 >

この作品をシェア

pagetop