DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
親父がおれの名前を呼ぶ。
「なあ、理仁」
おれは応えず、エレベータに向かう。
エレベータの扉は鏡みたいにツヤツヤに磨かれていて、親父の顔が見えた。
視線が合った。
「理仁、気を付けるんだぞ。胞珠を集める闇業者の動きが活発化している。おまえは守られなければならない」
ご忠告、どうも。
どこ行ったって聞かされるよ。
闇業者だの人さらいだの、呼び方はいろいろだけど。
人の臓器の中でも、胞珠って、いちばん高く売れるらしいね。
それでさ、胞珠の買い取りをやってる金持ちが誰なのか、って話。
世間がどんな噂を流してるか、親父も知ってる?
知ってるよね、そりゃ。エゴサーチとか、するでしょ?
親父さ~、真っ黒な噂だらけだよね。隣町のKHANといい勝負。
だって、この学校の生徒、よく変なことになってるらしいね。
特に、おれがいなくなってから。
ちっこい胞珠でも、集めて効率よくエネルギーを加えてやれば、おれの胞珠の代用品になるかもしれないし?