DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
海牙が息を呑むのがわかった。
姉貴のこと見つめてるというか、見惚れてるというか。
あのさー、海牙、状況わかってる?
実の弟がいる前で、姉貴に対するその物欲しげなまなざしは、ちょっと正直すぎないかい?
「行けます。もともと下宿先にも、今日は外食して帰ると言ってあります。ご一緒できるなら、ぜひ」
「じゃあ、おごってあげる。ほかのみんなはどう?」
文徳が「ごめん」のジェスチャーをした。
「すみません。バンドメンバーで食事の約束をしてます。ライヴの反省会と次回の予定を立てるから、今日のところはここまでで」
煥は文徳の言葉にうなずいた。
鈴蘭も、残念そうに眉尻を下げて唇を尖らせた。
「わたしの家は門限や規則がちょっと厳しいんです。ストリートライヴを聴くことも、必死で親にお願いして許可してもらったくらいなので、そろそろ急いで帰らないと」