DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
そんなわけで、路地から駅前の広場に戻った。
バンドのみんなは、鈴蘭のお迎えが来るまで一緒にそこで待機。
おれと姉貴は、へろへろになってる海牙を連れて、一足先に離脱した。
姉貴と海牙が並んで歩く後ろを、おれが一人で付いていく。
海牙って、同い年の目から見ると、かなり癖が強くていけ好かないタイプなんだけど。
八つ年上の姉貴には、変てこでかわいい犬でも拾っちゃった感じなんだろうか。
いつになく姉貴がはしゃいでるような気がして、おれは、どんな顔してればいいのかわからなかった。
だから、いつもと同じように、へらへら笑いの仮面を付けて、何も考えてないみたいにふざけておいた。
姉貴が誰かに取られるのがイヤっつーか、そう単純なんじゃなくて。
誰かが姉貴を決定的に傷付けるかもしれないのがイヤなんだよ。
海牙がちゃんとしたやつだって確信、今のとこ、まだないんだもん。