DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「緊急事態ですよ」
一夜明けて、朝。
おれは、姉貴と相部屋ツインで泊まってるホテルを出て、玉宮駅のそばのファミレスで伊呂波兄弟と合流した。
一緒に晩飯に行けなかったことの埋め合わせのつもりらしい。
「阿里海牙くんって、どんな人だった?」
注文を済ませると、文徳《ふみのり》に訊かれた。
おれは肩をすくめた。
「猫だね~。もうちょっとなつかないと、寄ってきてくれない感じ」
「四獣珠チームは、なかなか難儀だな。煥《あきら》も猫だし」
「おい、兄貴」
煥はクールそうに見えて、文徳と会話するときはけっこうちゃんと表情が動く。
むくれた表情。いじけた表情。
「マジか?」って目を見張る表情。
うつむいて前髪の下でこっそり笑う表情。