DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
自動ドアをくぐると、帰国したんだなーって感じさせる入店メロディが鳴って、いらっしゃいませー、と元気なおばちゃん店員の声が飛んできた。
おれは自分用のチョコレート菓子と、猫用に加工された上等な燻製《くんせい》肉を買った。
店から出て、自分のより先に燻製肉の袋を開けて、黒猫のほうを向いてしゃがんで、クールそうな金色の目を見る。
【ほら、食えよ。いじめねーから、こっち来い】
ちょっとの間、じーっと見つめ合う。
生意気な澄まし顔してるなー。こういう子、好きなんだよな。
思わずニマッとした瞬間、黒猫はしずしずとこっちへ寄ってきた。
【おまえの好みに合うかどうかわかんねぇけど、どう? 興味ある?】
おれは燻製肉を地面に置いた。
黒猫は、燻製肉の匂いを嗅いで、ペロッと舐めて、おれの顔を上目遣いで確認して、食事を始めた。