DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
ペットショップでも動物園でも水族館でも、動物がいるところに行ったら、いろんな声の波長で話し掛けてみる。
無反応がいちばん多いけど、ケンカ売られることもある。
というか、おれがうっかりケンカ売っちゃって、向こうはそれを買うだけなのかな。
なんていう、ちょっとしたエピソードをつらつらと、黒猫をビビらせないように気を付けながら、おれはしゃべった。
燻製肉を食い終わった黒猫は、前足をペロペロやって、顔のまわりをキレイにした。
喉を鳴らしている。
おれが黒猫の頭のほうに手を伸ばすと、むしろ自分からすり寄ってきて、黒猫はなでなでを喜んだ。
文徳はおれの隣にしゃがみ込んで黒猫を見ながら、ふっと脱力するように笑った。
「実は人なつっこいやつだったんだな。すごいふさふさ」
「美人だよねー。めちゃくちゃかわいい。ほらほら、黒猫、こっちのおにーさんも怖くないよ。すりすりしてやりな」
おれが誘導してやると、黒猫は澄ました表情のまま、文徳の手にも鼻を寄せた。
文徳が嬉しそうに顔をクシャクシャにする。