DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
腹をくくろう。
危機感と興奮と最悪の予感で、こめかみがズキズキする。
指先から冷えていくように感じる。
おれの勘はよく当たる。
逃げようがないって思う。
「逆なんだよ。おれと姉貴が、みんなのこと巻き込んでんだ。家族の中でどうにか片付ければよかった問題なのにさ」
海牙は目をそらした。
煥は眉間にしわを寄せて、鈴蘭は眉をひそめた。
文徳がおれの肩にポンと手を置いた。
「詳しい話はまた後で。理仁、独りで何とかしようなんて、絶対に思うなよ」
文徳の顔を何となく見られなくて、文徳の手を見た。
ギターだこ、っていうやつだろうか。指先に白いカサカサの鱗みたいなのがある。
おれはうなずいた。
うなずく以外のリアクションができなかった。